10月10日、東京日本橋の三越劇場で開催されたWeights & Biases主催「Fully Connected Tokyo」にて、Sakana AIのCTOであるLlion Jones氏が登壇した。Jones氏は日本語で自己紹介を行い、AIに対する人間の期待の変遷や、ダニエル・カーネマン氏の「システム1とシステム2」という認知モデルを引用しながら、AIが直感的な判断(システム1)を模倣する能力に優れている一方で、論理的思考(システム2)にはまだ課題が残ることを指摘。その後、AI技術が人間の知的作業をどのように補完し、進化的アプローチを通じてそれを自動化するかが詳述された。

注目されたのは、「AIサイエンティスト」という概念である。これは、AIがアイデア生成から実験計画、データ解析、さらには論文執筆までのプロセスを自動化し、人間の介在なしで知識が創出される未来像を提示したものだ。

数日前にジェフリー・ヒントン氏がディープラーニングの基礎研究でノーベル賞を受賞したことは、AI技術の成長とその社会的影響力を象徴する出来事である。ヒントン氏の研究がAI技術の出発点であった一方、Jones氏はそれを発展させ、AI技術が次の段階に進んでいることを示す講演となった。ヒントン氏の功績が「AIの過去」を象徴するものであるなら、Jones氏の講演は「AIの未来」姿で、氏が冒頭で語ったとおり、AI研究が大きな転換期を迎えていることを強く感じさせた。

また、柔和な口調で難解な技術をわかりやすく解説し、AI技術の可能性と課題を丁寧に伝える氏の姿勢が非常に印象的であった。日本のAIコミュニティの強化が進められるという展望も示され、会場には期待感と静かな熱気が漂っていたように感じられた。